FIELD LOG #007

派遣会社のDXは、ツールより先に業務の聞き取りから

派遣会社のDX支援派遣会社のDX支援聞き取り → 業務フロー図 → 小さく試す

DXのご相談は、たいてい「どのシステムを入れればいいか」から始まります。その質問に、私たちはすぐには答えないようにしています。

派遣会社の DX(デジタル化による業務の見直し)のご相談は、たいてい「どのシステムを入れればいいか」から始まります。私たちは、その質問にすぐには答えないようにしています。

派遣会社のバックオフィスで起きていること

派遣会社の勤怠・請求・給与・入社手続きの業務を一つずつ聞いていくと、よく似た状態に行き当たります。

  • スタッフの情報が、いくつもの管理表とシステムに分かれている
  • 勤務表の多くが、紙やFAXで届く
  • 勤務表から集計表へ、集計表から請求・給与のシステムへ、同じ数字を人が何度も入力している
  • 取引先ごとに、勤怠の時間の丸め方や締め日が違う
  • 取引先ごとの決まりごとが、担当者の頭の中にしかない

どれも、誰かが怠けているから起きているわけではありません。取引先ごとの事情に一つずつ応えてきた結果です。だから、システムを一つ入れ替えただけでは片づきません。

一人ずつ、画面を見ながら聞く

最初にやるのは、担当の方への聞き取りです。課題や感想を聞くのではなく、実際の画面を共有してもらいながら、誰が・いつ・何を・どのシステムで・なぜ・どう処理しているかを確かめます。一人あたり2時間ほど。本社と拠点、立場の違う方に別々に話を聞きます。

責任者の方の説明と、現場の実際は、たいていどこかでずれています。それは悪いことではなく、前提です。何人かに聞いて、食い違うところは食い違うまま記録します。

図にして、本人に直してもらう

聞いた内容は業務の流れ図に起こし、話してくれた本人に確認してもらいます。私たちが描いた図にも誤りがありました。入金を入力する位置を間違え、本当は両方やっている作業を、どちらか一方のように描いていた。指摘を受けて、聞き取りの記録を最初から読み直して直しました。

本人が「これで合っています」と言うまで直した図でないと、その先の議論の土台になりません。

事実と、提案を分けて書く

報告書では、数字の確かさを3つに分けて書いています。

  • 実績値:会社が記録している数
  • 申告値:聞き取りで答えていただいた数
  • 試算・提案:私たちの見方

たとえば作業時間は、多くの場合、担当の方の申告です。申告の数字を、そのまま削減できる時間のように書くことはしません。確認が取れていないものは「確認中」と書きます。

解決の手段を比べるときも同じです。既存のシステムに寄せる案、必要な範囲を新しくつくる案、いまのシステムを残してつなぎ方を整える案。同じ条件で並べ、新しくつくる案を私たちが開発する場合は、そのことを明記します。比べる側と、選ばれる側が同じだからです。

小さく試して、実物で判断していただく

システムを決めるのは、実物を触ってからでいいと考えています。いまのシステムは止めずに、その裏で小さな範囲から作り、現場の方に使ってもらう。評価の観点は先に決めておきます。迷わず使えるか。取引先の負担が増えないか。手数が減ったか。

目指すのは、最初から完璧に使えることではありません。「調整すれば使えるものになる」と分かることです。構造的に無理な部分が見つかったら、その時点で止めます。

人が確かめるところは、残す

自動にするのは「作業」です。給与の最終的な確認や支払いの承認のように、判断が要るところは人に残します。取引先ごとの細かい決まりも、システムが下書きをつくり、人が確定する形にします。

そして、作った後のことを先に決めます。データをいつでも取り出せること。ほかの会社でも引き継げる設計書を残すこと。仕組みが、作った会社の中にしかない状態は繰り返さないようにしています。

聞き取りの現場で何が起きていたかは、Field Log #001 にも書いています。

文・片桐 正嗣株式会社TL 代表取締役

ご支援先が分からないよう、社名と一部の内容を伏せています。