求人媒体に載せているのに、欲しい人から応募が来ない。そういうとき、まず出てくるのが「媒体を替えたほうがいいでしょうか」というご相談です。
求人媒体に載せているのに、欲しい人から応募が来ない。そういうとき、まず出てくるのが「媒体を替えたほうがいいでしょうか」というご相談です。
気持ちはよく分かります。ただ、私たちの答えはたいてい「替える前に、確かめることがあります」です。集まりにくい案件は、どの媒体に載せても集まりにくい。媒体は手段のひとつで、何を組み合わせるか、誰がどこまで動くかのほうが結果を左右します。
まず、今の媒体で足りるのかを数字で確かめる
最初にやるのは、今の媒体で目標に届くのかどうかの見極めです。感覚で「足りない気がする」と言うのではなく、逆算します。
過去の実績から、応募から面接、面接から採用までの歩留まりを出します。そこに目標の採用人数を当てると、必要な応募数と、それを集めるのにかかる期間が見えてきます。今のペースで届くなら、媒体を足すより原稿や応募後の対応を直すほうが先です。
届かないと分かったら、次は市場を見ます。対象になる年齢の人がその地域にどれくらいいるか。同じ業種の求人が増えていないか。近くに大きな募集をかけている競合がいないか。数字と市場の両方から「この媒体ひとつでは限界がある」と示せると、社内で別の手段に予算を回す話が通りやすくなります。
大量に採用する予定があるなら、時期も大事です。周りの会社と募集の時期が重なると、同じ人を取り合うことになります。重なる前に動き始めるほうが、同じ予算でも結果は変わります。
媒体を替えても、案内する役割がなければ人は来ない
会社として人を入れたい取引先ほど、自社の募集ではほとんど応募が来ず、人材紹介に頼りきりになっている。派遣会社からよく聞く話です。
こういう案件は、何もしなければやはり人が来ません。媒体を替えれば解決する、というものでもない。大事なのは、来てくれた応募者に「こういう仕事もあります」と積極的に案内し、その案件につなげる役割を、どこが担うのかを決めることです。社内に専任の担当を置くのか、外の紹介会社や採用代行に任せるのか。
もうひとつ、特定の案件に集中して人を入れることと、全体の採用の仕組みで稼働人数を支えることは、どちらか一方ではありません。両方要ります。全体はふだんの求人で費用対効果よく集め続け、急ぎの案件だけ別の手を打つ。役割を分けておくと、どちらの数字も見やすくなります。
自社の名前で出す。自社メディアを整える
組み合わせを考えるとき、私たちは三つに分けて見ています。お金を払って載せる有料の媒体。掲載料のかからない求人検索型のサイト。そして自社のサイトやSNSといった、自分たちで持っているメディアです。
有料媒体はこれからも主力ですが、求人検索型のサイトにも手を抜かずに質の良い原稿を出します。このとき、人材紹介会社の名前で出すより、その会社自身の名前で募集したほうが、母集団は作りやすいと感じています。求職者は聞いたことのない仲介の会社より、働く会社の名前を見て判断するからです。
自社メディアは後回しにされがちですが、求職者は応募する前に会社のサイトを確かめています。そこにありきたりな文章しかないと、せっかく興味を持った人が離れていきます。具体的な仕事の中身や働く人の様子で、自分たちを表すことです。手間のかかる部分は、いまはAIで補えます。拠点の判断ですぐ動ける小さな事業者ほど、ここは効果が出やすいところです。
まだ探していない人には、SNS広告で届ける
求人媒体を見ているのは、今まさに仕事を探している人です。媒体だけで足りないということは、その層の取り合いに負けているか、そもそもその層が少ないということでもあります。
そこで、まだ仕事を探していない人に届く手段として、SNS広告を組み合わせます。役割が違うので、応募のあとに採用まで進む割合は、求人媒体より低く出やすい。それは媒体の性質で、運用の失敗ではありません。最初からそのつもりで数字を見ます。
まだ探していない人に、いきなり「応募してください」と言っても動きません。見学会や、自分に合う仕事が分かる診断のような、気持ちのハードルが低い入口から関心を持ってもらうほうが反応は良くなります。一つの拠点に一人、資格を持った人が欲しい。特定の拠点にまとまった人数を短期間で集めたい。こうした狙い撃ちの募集も、求人検索型より、専用のページを作ってエリアを絞った広告で取りに行くほうが向いています。
運用型の広告は、成果がある程度たまって初めて配信が良くなっていきます。一か月で判断せず、数か月は続ける前提で予算を組んでください。
スカウトは少しずつ送り、辞退の理由を数える
求人を出すだけでは応募が来ない経験者や管理職の候補には、スカウトを組み合わせます。掲載は最小限でかまいませんが、ゼロにはしません。スカウトを受け取った人が会社の求人を見に行く先として、掲載は残しておきます。
管理職の候補なら、送る前に「どんな人が欲しいか」を分解しておきます。現場での指導力なのか、仕事の段取りを組み立てる力なのか、数字を読む力なのか。どれをどこまで求めるかで、探す場所も対象も変わります。業界の経験者に限らず、別の業種でお店や現場をまとめてきた人まで広げられることもあります。
スカウトは一度に全部送りません。文面や対象を変えて比べながら、少しずつ送ります。そして、返ってきた辞退の理由を数えます。
ここは私たち自身の見立て違いでもあります。条件どおりの対象者がなかなか見つからず、対象を広げて送ったところ、辞退の理由でいちばん多かったのが「希望の仕事内容と違う」でした。経歴には経験があっても、直近は別の業種で働いている方まで含めてしまっていた。いまは、過去の経験より直近の経歴を先に見て、対象を絞っています。数を送ることより、受け取った人が「自分のことだ」と思える相手に送るほうが、結局は面談につながります。
もうひとつ、スカウトは返事が来るまでに時間がかかる人もいます。送れる期間の期限ぎりぎりではなく、早めに送り切るようにしています。
人材紹介とは、頼り方を変える
人材紹介を使っているのに推薦が少ない、というご相談もあります。紹介会社にも得意不得意があり、スカウトや求人媒体の運用で自前で人を集める力を持っているところもあれば、登録者の中から探すだけのところもあります。推薦の数が足りないなら、自分たちで集める力のある紹介会社を直接つなぐのが早いことがあります。契約のひな型を今使っているものと同じ条件にすれば、手続きの手間もそれほどかかりません。
一方で、一人採るたびに紹介手数料を払い続けている会社には、自社の名前で求人広告を回してみることもおすすめしています。思っていたより少ない広告費で、条件に合う応募が集まることがあります。自社に直接来た応募なら、会ってみようと思える方も多いはずです。広告費と運用の手間をまとめて外に任せるほうが、成功報酬を払い続けるより合うこともある。どちらが良いかは、会社ごとに数字を並べて比べます。
集まった応募者のデータは、会社の資産になります。ただ、寝かせておくと動かなくなるので、早めに次の案内につなげることです。
予算は、主力に集中してから広げる
手段が増えると、予算を最初から均等に配りたくなります。私たちは逆の順番で考えています。
予算が限られているなら、まず主力の媒体に集中させます。実績の乏しい媒体にすぐ振り分けず、主力で応募をきちんと増やせるかを確かめる。予算を上げても応募単価が下がらなくなった、その限界が見えたところで、取りにくい地域や職種の分だけを、別の媒体やスカウト、SNS広告に回します。
いきなり全部に少しずつ入れると、うまくいかなかったときに何が原因なのかが分かりません。何を足したら何が変わったのかが見えるように、一つずつ足していくのが遠回りに見えて近道です。
応募数ではなく、条件に合う「有効応募」で手段を比べる考え方は、Field Log #010 に書きました。
媒体を替える前に確かめること
- 過去の歩留まりから、目標に必要な応募数と期間を逆算したか
- 対象年齢の人口、同業種の求人の増え方、近くの競合を調べたか
- 応募者を案件に案内する役割を、誰が担うか決めたか
- 自社の名前で、求人検索型のサイトにも質の良い原稿を出しているか
- 応募前に見られる自社サイトに、具体的な中身があるか
- まだ探していない人向けに、SNS広告と低いハードルの入口を用意したか
- スカウトの対象は直近の経歴で絞り、辞退の理由を数えているか
- 推薦の少ない紹介会社に頼り続けていないか
- 予算は主力で限界を見てから、別の手段に回しているか
どこまでを外に任せ、どこを自社に残すかは Field Log #004、求人原稿のクリック率の直し方は Field Log #009 にまとめています。
よく聞かれること
- 結局、どの媒体がいちばん良いのですか。
- 職種や地域、欲しい人の層で変わるので、一つには決められません。私たちは応募数ではなく、条件に合う応募の数と、そこから面接・採用まで進んだ割合で媒体を比べています。
- SNS広告からの応募は、採用につながらないと聞きました。
- 仕事を探していない人にも届くので、応募のあとの歩留まりは低く出やすいです。それを前提に、見学会などの入口を用意し、配信するエリアを絞って予算の効率を上げます。
- スカウトは、たくさん送ったほうが当たるのでは。
- 数を増やすと、合わない人にも届いて辞退が増えます。文面と対象を変えながら少しずつ送り、辞退の理由を見て対象を直すほうが、面談にはつながりやすいです。
- 人材紹介をやめたほうがいいということですか。
- やめる必要はありません。自前で集める力のある紹介会社を選ぶこと、自社名義の募集と比べて使い分けることをおすすめしています。
文・片桐 正嗣株式会社TL 代表取締役
ご支援先が分からないよう、社名と一部の内容を伏せています。
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