採用は計画どおりに進んでいる。なのに、稼働しているスタッフの数が増えない。派遣会社のご相談で、何度も聞いてきた話です。
採用の数字は、計画どおりに進んでいる。広告も増やしたし、面接も回っている。それなのに、稼働しているスタッフの数が思ったほど増えない。派遣会社の営業や事業の責任者の方から、何度も聞いてきた話です。
こういうとき、まず採用をもっと増やそう、となりがちです。私たちは、その前に退職の方を見ます。入ってくる数を増やしても、出ていく数が同じだけ増えていれば、稼働人数は動かないからです。
計画と実績を、採用・退職・配置転換に分けて見る
最初にやるのは、稼働人数の計画と実績のずれを、中身ごとに分けることです。
- 採用:新しく稼働を始めた人の数は、計画どおりだったか
- 退職:稼働を終えた人の数は、見込みの範囲だったか
- 配置転換:別の仕事に移った人、移る予定だった人はどれくらいいたか
合計だけを見ていると、「足りない」ことは分かっても、どこで足りなくなったのかは分かりません。採用が計画どおりで、退職が想定を上回っている。そういう形が見えたら、手を打つ先は採用ではなく退職です。一番効くのは、辞める人を減らすことになります。
目標の置き方も、ここで見直します。稼働人数の目標を一つの数字で持つのではなく、「何人採用し、何人の退職までに抑えるか」に分けて持つ。売上の目標を単価と件数に分けて逆算するのと同じで、分けておくと、ずれたときにどこを直せばいいかがすぐ分かります。
辞める理由を、防げるものと防げないものに分ける
派遣スタッフの離職を、全部防ぐことはできません。家庭の事情、引っ越し、体調、学業。こうした理由での退職は、会社の努力ではどうにもならないことが多いです。
一方で、防げる離職もあります。シフトが減って思うように稼げなくなった。職場の人間関係に困っているのに、誰にも言えていない。同じ仕事が続いて、別のことをやってみたくなった。こうした理由は、早く気づければ手を打てます。
だから私たちは、離職を「避けられないもの」と「防げるもの」に分けて、防げる方にだけ手を打つようにしています。全部を防ごうとすると、営業担当の手が回らなくなるからです。
稼げなくなる前に、次の仕事を組み合わせる
防げる離職のなかで、分かりやすいのがシフトの減少です。働ける日数が減って収入が下がれば、別の会社の仕事を探し始めるのは自然なことです。
ここで大事なのは、ゼロになる前に動くことだと考えています。シフトが減り始めた段階で、近くの別の仕事と組み合わせて働けないかを案内する。長い仕事の合間に、短期や単発の仕事を入れる。本人が他社の求人を見始める前に、こちらから選択肢を出せるかどうかで、残ってもらえるかが変わります。
そのためには、営業担当が「誰のシフトが減っているか」を知っていなければいけません。スタッフが多くなるほど、それを頭の中だけで追うのは難しくなります。
毎月の短いアンケートと、面談のルール
スタッフが多いと、一人ひとりの状態をつかみきれない。これも、よく聞く悩みです。営業担当の頑張りで補おうとすると、担当によって見え方がばらばらになります。
私たちが提案しているのは、スタッフの状態を測る仕組みを先につくることです。形はシンプルです。
- 毎月、全員に短いアンケートを送る。答えるのに1分もかからない程度にする
- 回答が途切れた人、点数が低かった人を、自動で拾い出す
- 拾い出した人の担当営業に、面談するよう知らせる
- 面談したら、結果を報告するところまでを決まりにする
ポイントは、「気になったら声をかける」ではなく、「この条件に当てはまったら面談する」というルールにすることです。ルールにしておくと、担当が忙しい月でも抜け落ちにくくなり、定着の取り組みが業務として回るようになります。
回答が途切れることも、大事な合図だと考えています。不満を書いてくれる人より、何も言わなくなった人の方が、黙って辞めていくことがあるからです。
いまあるチェックを、退職と突き合わせる
新しい仕組みをつくる前に、すでに取っているものを見直すこともあります。入社時の面談の記録や、定期的に聞いている満足度などです。
それらの結果と、その後に辞めた人・続いている人を突き合わせてみる。辞めた人に共通する傾向が見つかれば、それが一番早い合図になります。逆に、取っているのに退職と何の関係も見えないチェックは、聞き方を変えた方がいいのかもしれません。
そして、異常が出たときに誰が、いつまでに、どう対応するかも一緒に決めます。結果を集めるだけで動く人が決まっていなければ、仕組みは形だけになります。
「別の仕事もやってみたいか」を聞いておく
アンケートには、状態を測る質問のほかに、一つ入れておくとよい問いがあります。「別の職種に挑戦してみたいか」です。
同じ仕事を続けてきた人が、違うことをやってみたくなるのは自然なことです。その気持ちに気づかないままだと、本人は他社の求人で次の仕事を探します。先に聞いておけば、社内での配置転換として受け止められるかもしれません。冒頭で、計画と実績を「配置転換」でも分けて見ると書いたのは、このためです。
これは、新しく応募してきた方についても同じです。長く働く仕事に合わなかった方に、希望に応じて短期の仕事を案内する。短期で応募してきた方にも、長く働く意向や働ける日数を聞いておく。入口で終わらせずに、別の働き方につなげる考え方は、定着の考え方とつながっています。
営業担当に、全部を背負わせない
定着の話になると、「営業がもっとスタッフをフォローすべきだ」という結論になりがちです。気持ちは分かります。ただ、スタッフの数が多い会社で、それを担当一人ひとりの努力に任せるのは無理があると考えています。
定着のための手立ては、大きく二つです。長く働くことに報いるインセンティブと、スタッフの状態を測る仕組み。前者は制度の話、後者は運用の話です。どちらも、営業担当の頑張りの外側に置いておく。そのうえで、営業担当には「ルールに当てはまった人と話す」ことに時間を使ってもらう。そう分けた方が、続きます。
営業の側で、どんな案件を受けるかを先に決めておく話は、Field Log #006 派遣会社の営業支援で、最初に決める「受ける条件」 に書いています。受ける案件を選ぶことと、来てくれたスタッフに長く働いてもらうこと。稼働人数は、その両方で決まります。
- 派遣スタッフの離職率は、どれくらいなら普通ですか。
- 仕事の種類や、短期・長期の割合で大きく変わるので、他社の数字と比べるより、自社の計画と比べる方が役に立つと考えています。見込みより退職が多い月があれば、その中身を分けて見るところから始めます。
- アンケートは、何を聞けばいいですか。
- 長くしないことを優先します。いまの仕事の満足度、シフトや収入への不安、困っていることの有無、別の職種に挑戦したいか。このくらいに絞り、毎月同じ質問で変化を見る方が使いやすいです。
- スタッフが少ない会社でも、仕組みは要りますか。
- 担当が全員の顔と状況を把握できているうちは、無理に仕組みにしなくてもよいと思います。ただ、担当が替わったときに引き継げるよう、面談の基準と記録の残し方だけは早めに決めておくことをおすすめしています。
文・片桐 正嗣株式会社TL 代表取締役
ご支援先が分からないよう、社名と一部の内容を伏せています。
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