FIELD LOG #010

応募数が採用につながらないとき、有効応募で採用のKPIを置き直す

採用支援・RPO採用のKPI設計有効応募の定義 → 逆算 → 段階ごとの単価 → 振り返り

応募数は目標どおり。なのに面談まで進む人が少なく、現場からは「欲しい人が来ていない」と言われる。採用の数字を見直すご相談で、いちばんよく聞く話です。

応募数は目標どおり。応募単価も下がっている。採用担当の手元の数字は良いのに、現場からは「欲しい人が来ていない」と言われる。こうしたご相談を、私たちは何度も受けてきました。

原因の多くは、何を数えているかにあります。この記事では、採用の指標を「応募数」から「有効応募」に置き直すときに、私たちが何を決め、どう進めているかを書きます。

応募数だけを追うと、条件を緩めれば達成できてしまう

応募数は、数ある指標の一つです。それだけを目標にすると、理屈の上では対象外の応募をいくら集めても達成できてしまいます。条件を緩めれば応募は集まります。けれど、それでは採用につながりません。

応募単価も同じです。対象外の応募が増えれば、単価は下がって見えます。数字の上では改善でも、面談に呼べる人は増えていない。採用側の数字と現場の実感がずれるのは、たいていここです。

もう一つ、見落とされやすいことがあります。求人検索型の広告は、応募という成果をもとに配信を学習します。対象外の応募が増えると、そちらに予算が寄っていく。応募数を追うほど、狙っていない人に届きやすくなるわけです。

有効応募を、先に言葉で決めておく

そこで私たちは、集める側のいちばん大事な指標を「有効応募」に置きます。重複を除き、案件ごとに決めた対象の条件に合う応募のことです。採用チームが責任を持てるのはここまで、という線でもあります。

大事なのは、定義を案件ごとに言葉で決めて、関わる人全員でそろえておくことです。そろっていないと、同じ月の数字が人によって変わります。最初に決めるのは、たとえば次のようなことです。

  • 同じ人が複数の求人や媒体から応募したとき、どう数えるか
  • 以前に応募や登録があった人を、新しい応募として数えるか
  • 対象の条件は何か。原稿に書いた応募資格と一致しているか
  • 連絡がつかない応募や、いたずらと思われる応募をどう扱うか

条件については、注意が要ります。募集・採用で年齢を理由に制限を設けることは、労働施策総合推進法で原則として禁止されています。厚生労働省は、求人票では年齢不問としながら実際には年齢で応募を断ることも、法の規定に反すると説明しています(厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」)。

ですから、年齢を有効応募の条件に入れられるのは、法令が認める例外にあたる場合だけです(ハローワーク「年齢制限の例外事由」)。例外を使うときは、どの例外にあたるか、その理由を原稿に示します。なお、例外の多くは期間の定めのない雇用で募集することが前提で、有期雇用が中心の派遣スタッフの募集では、使える場面はほとんどありません。原稿に書いていない条件を、裏で有効応募の定義にすることはしません。例外にあたる条件なら、原稿にはっきり書いたほうが、対象外の応募も減ります。

必要な有効応募の数は、採りたい人数から逆算する

有効応募の目標は、媒体の過去の実績から決めるものではありません。まず、月ごとに何人採りたいのかを確かめます。そこから、有効応募が面談、内定、入職へと進む割合の見込みを使って、さかのぼります。

  1. 月ごとに採りたい人数を決める
  2. 内定から入職、面談から内定、有効応募から面談へと進む割合の見込みを置く
  3. 採りたい人数から、必要な面談数、必要な有効応募数を順に割り戻す
  4. いまの有効応募の割合から、必要な応募数を出す

割合の見込みは、最初は粗くてかまいません。実際の数字が出てきたら置き換えていきます。逆算しておくと、「応募数は足りているのに、有効応募が足りない」のか、「有効応募はあるのに、面談に進まない」のかが分かれて見えます。手を打つ場所が変わります。

単価は、段階ごとに見る

費用の見方も、応募単価だけでは足りません。私たちは入口から入職まで、段階ごとに単価を出します。

  • 有効応募1件あたりの費用
  • 面談の予約1件あたりの費用
  • 面談の実施1件あたりの費用
  • 内定1件あたりの費用
  • 入職1人あたりの費用

段階ごとに並べると、どこで費用がふくらんでいるかが見えます。応募単価は安いのに面談実施の単価が高いなら、入口ではなく、応募後の対応に問題があるかもしれません。

採用単価をどこまで許容するかも、一律ではありません。利益率の高い案件なら、高い採用単価でも見合うことがあります。案件ごとに許容できる線を決め、その設計を会議で共有しておくと、「高い」「安い」の議論がぶれなくなります。

有効応募が少ないとき、対象外を減らすより対象を増やす

有効応募の割合が低いと分かると、まず対象外を減らそうとしがちです。ただ、応募を絞ると、応募数も有効応募も一緒に減ってしまうことがあります。

私たちは、対象の層からの応募を増やすことを主な打ち手に置きます。進める順番は、まず応募の母数を取り、有効応募の割合を保ちながら引き上げていく。手段としては、次のようなものです。

  • 狙う層に届くように、画像と文言の打ち出しを変える
  • SNS広告やスカウトなど、配信の対象を細かく絞れる手段を使う
  • 媒体とつながった応募者管理システムで、選考の結果を正しく更新する。どんな人を採るのかを、媒体側に学習させるためです

有効応募が少ない状態が続くなら、応募数が減っても対象を絞る原稿に変える判断もします。どちらが先かは、逆算した数字を見て決めます。

予算を上げた途端に対象外が増えた、ということもあります。そのときは、エリア、職種、応募者の属性ごとに分けて、なぜそうなったかを確かめます。予算をさらに上げるのか、据え置くのか。そこまで言い切れる精度で判断するようにしています。

数字が合わないのは、たいていステータスの運用

有効応募で見ようとしても、そもそも数字が出せないことがあります。原因は、多くの場合ステータスの運用です。「進行中」のまま止まっている応募者が多い。担当者ごとに手元のシートで管理していて、数字がばらばら。性質の違う応募者が一つの管理表に混ざっている。

分析の対象外の区分が混ざったまま分析すると、見当違いの結論になります。私たちが最初に整えるのは、次のようなところです。

  • 採用管理システムを共通の言葉にして一本化し、手元のシートで集計しない
  • ステータスの定義をそろえる。一定期間連絡がつかなければ不採用、日程調整中は進行中にしてメモを残す、など
  • 「この求人への応募がどうなったか」と「登録スタッフかどうか」は別のことなので、別の項目で持つ
  • 分析の対象外の区分は、先に分けておく
  • 営業などほかの部署には、必要な人だけを抜き出した閲覧専用のシートを渡す。情報を守ることと、連絡漏れを防ぐことを両立させるためです

区分を分けたら、有効応募から面接を実施できた割合を見ます。選考の通過率が高いのに採用が足りないなら、問題は入口の応募数にあると読みます。媒体別の応募数と、個人情報を伏せた応募の明細(応募日時や辞退の理由など)があれば、応募が多い曜日や時間帯から、週末や夜間の対応が要るかも判断できます。

有効応募の手前と先で、話す相手を分ける

指標を置き直したら、振り返りの場も分けます。有効応募までは、集める側が報告する場。有効応募から先、面談の設定や見学、そこでの歩留まりは、現場と一緒に議論する場です。

拠点がいくつもある場合は、振り返りの会議を拠点ごとに短く分けています。人数が多い会議では、発言しない人が出るからです。目的は、それぞれの拠点が自分の数字を毎回つかむ癖をつけることにあります。

  • 採用管理システムのデータを貼るだけで、拠点ごとの歩留まりが出るシートを用意する
  • 拠点ごとに「気づきと対策」を書く欄と、前月と比べられる履歴を置く
  • まだ手がついていない応募の件数も出す
  • 定例は数字とアラートに絞り、拠点長には閲覧の権限を開けて、いつでも状況を見られるようにする
  • 分析の資料には、各ページに一言の考察を添える

最後は、入社と定着まで見る

有効応募は、集める側の指標としては大事です。ただ、それで終わりではありません。私たちは最終的に、三つの段階で見ています。対象の人から反響があるか。入社するか。定着するか。

入社と定着のデータは、採用する会社の側にあります。ここは受け取って一緒に分析させていただくようにお願いしています。有効応募が増えても、入社した方がすぐ辞めてしまうなら、原稿か、選考か、受け入れのどこかに見直す点があります。

採用代行で何を任せ、何を自社に残すかは Field Log #004「採用代行(RPO)で任せること、自社に残すこと」 に、応募が増えたのに面接が増えなかったときの話は Field Log #003 に書きました。あわせて読んでいただけると、この記事の数字が、日々の対応のどこにつながっているかが見えやすいと思います。

よく聞かれること

応募数は、もう見なくていいのですか。
見ます。ただ、目標には置きません。有効応募の割合を出すための分母として見ます。応募数が多いのに有効応募が少ないなら原稿や配信の問題、応募数そのものが少ないなら掲載の量の問題、と切り分けに使います。
有効応募の定義は、誰が決めるのですか。
採用する会社と私たちで、案件ごとに一緒に決めます。現場が「欲しい人」と思っている像と、原稿に書いた応募資格がずれていないかも、このときに確かめます。
年齢で有効応募を区切ってもよいですか。
法令で例外として認められ、原稿にその理由とともに明示している場合に限ります。原稿に書いていない条件で応募を区切ることはしません。迷うときは、厚生労働省の資料で例外にあたるかを確かめてから決めます。

文・片桐 正嗣株式会社TL 代表取締役

ご支援先が分からないよう、社名と一部の内容を伏せています。